家庭血圧の測り方

血圧はちょっとしたキッカケ(体動、食事、精神的影響など)で大きく変動しやすいものです。外来受診時やスポーツクラブ、健康診断などで測定した血圧は、普段の生活環境とは大きく異なるため、その人の“本当の血圧”を表しているとはかぎりません。正しく血圧を評価するためには『家庭血圧』を測定する必要があります。それも1度や2度の測定ではなく、何度も測定し記録する必要があります。
家庭で使用できる血圧計は上腕で測るタイプと手首で測るタイプがあります。これらの測定差は10mmHg以内です。手首タイプの方が測定に便利ですが、上腕タイプの方がより精確とされ、使用が勧められています(日本高血圧学会「家庭血圧測定条件設定の指針」,2003)。
No23家庭血圧による高血圧症の基準は135/85以上です(米国合同委員会, 1997)。家庭血圧測定での注意点は、測定条件(環境)をできるだけ一定にすることです。測定は朝と夜の1日2回行うことが望ましく、タイミングは右図に示す通りです。数分間の安静座位後に測ること、飲酒や入浴は血圧への影響が大きいことが重要なポイントです。
一機会に何回測定して、何回目の測定結果を記録すべきかはまだ研究で結論が出ていません。いずれにせよ、いつも同じ方法で測定した方がいいでしょう。家庭血圧において重要なことは、“とにかく継続して測定する”ことです。測定する回数やタイミングが多少異なったとしても、根気よく測定し続けることが大切です。

インフルエンザ感染症の治療

今年は流行が遅くなりましたが、最近になっていよいよインフルエンザの患者さんが増えてきました。そこで今月はインフルエンザの治療法についてお話ししたいと思います。
まず、インフルエンザ感染症は基本的には「治療しなくても治る病気」です。しかし、世の中には抗インフルエンザ薬という薬もいくつか存在します。ほっといても治ることが多い病気なのに、治療のための薬がある・・・そのようなややこしい状況であるため、インフルエンザの治療について薬の効果や副作用について正しく理解していただき、患者さん自身に選んでもらう必要があります。
infuru1インフルエンザの治療には(図1)に示すように四つの選択肢があります。抗インフルエンザ薬の効果はもともと健康な人の場合、「症状を半日~1日程度短くすることができる“かもしれない“」という程度でinfuru2す。(図2)に示すようなリスクの高い患者さんの場合には投与が勧められています。麻黄湯という漢方薬は抗インフルエンザ薬と同等の効果があると言われています(特に比較的体格が良く、発症早期で、発熱はあるがまだ汗をかいていない状態の場合)。対症療法とは、解熱鎮痛剤や咳止めなどで症状に対する治療を行うことです。
もちろん、薬を使う場合には副作用にも注意が必要です。代表的な抗インフルエンザ薬であるタミフル®という薬の場合には約1%弱の確率で下痢、腹痛、悪心、嘔吐といった副作用が認められています。因果関係は未だ不明ですが、10代の人に投与した場合、異常行動などが生じたという報告もあります。麻黄湯では、虚弱体質の人や心臓が弱い人に投与すると逆に体調が悪くなる可能性があります。

以上のことを踏まえて、自分が納得できる治療方法を選択できるように、医師と相談してみましょう。

アルコールとの上手な付き合い方(適正量)

アルコールによる健康問題は日常的に起こりうるもので、健康診断や定期受診などで「血圧を下げるためにお酒を控えましょう」「肝機能の値が高いのはお酒が多いからですね」などと言われたことがある方も多いのではないでしょうか。総合診療外来を受診する10人に1人がアルコールが原因と思われる体調不良で受診していたという調査結果もあります。アルコールは国民全体の重要な問題と考えられ、平成25年12月にアルコール健康障害対策基本法が国会で成立しました(平成26年6月施行)。この法令ではアルコール依存症や急性アルコール中毒だけではなく、「アルコール依存症その他の多量の飲酒、未成年者の飲酒、妊婦の飲酒等の不適切な飲酒の影響による心身の健康障害」という広い意味で「アルコール健康障害」を定義しています。

では、節度ある“ほどほど”の飲酒とはどの程度なのでしょうか?alcohol
「健康日本21(厚生労働省)」では「飲酒量は1日2ドリンクまで。休肝日は週2日」とされています(1ドリンク=純アルコール量10g)。具体的な量としては右図を参考にして下さい。この2倍量(4ドリンク)では生活習慣病のリスクが高まり、3倍量(6ドリンク)以上では多量飲酒とされています。アルコールへの身体の反応は個人差が大きいので、右図の量であれば健康障害はないと保障するものではありません。「いきなりこんなにお酒の量を減らせない!」という方は、まずは「1日0.5~1ドリンクだけ減らす」「休肝日を週1日だけ作ってみる」「飲酒日誌をつける」というように少しづつチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

高齢者の不眠症

今月は「不眠症」についてお話しします。60歳以上の5人に1人以上は不眠症に悩んでいるといわれる、非常に“よくある健康問題”です。
ところで、人はどの程度の睡眠をとればいいのでしょうか?1日に必要な睡眠時間は年をとるにつれて徐々に減ってきます。「健康づくりのための睡眠指針2014(厚生労働省)」によると、25歳では約7時間程度ですが、65歳になると6時間程度です(20歳年をとるたびに約30分睡眠時間は短くなります)。必要な時間以上に長く睡眠をとったからといって健康になるわけではありません。年をとると、睡眠時間が短くなるのは自然なことです。日中に眠くなり困らなければ、これよりも多少短い睡眠時間でも全く問題ありません。
以下に「睡眠を阻害するもの」「熟年世代の睡眠のポイント」「医師に相談した方が良い睡眠問題」を示します。お酒は睡眠が浅くなり、タバコやカフェインは覚醒物質なので、これらは避けるようにしましょう。これらを参考にまずは自分の睡眠を見直してみてください。

不眠にお悩みの場合や、「医師に相談した方が良い睡眠問題」がある場合には、気軽にご相談ください。

 【睡眠を阻害するもの】
・夜食
・就寝前の飲酒や喫煙
・就寝前3時間以内のカフェインの摂取
 【医師に相談した方が良い睡眠問題】
・日中、眠気で困っている
・睡眠中の激しいいびき、無呼吸
・手足のぴくつき、むずむず感
・歯ぎしり
【熟年世代の睡眠のポイント】
・朝晩のメリハリをつける
・昼間に適度な運動をする
・眠くなってから床に入る
(寝床で長く過ごし過ぎると熟眠感が減るので注意!)
・年齢にあった睡眠時間を
参考)「健康づくりのための睡眠指針2014」(厚生労働省)

太ももを鍛えよう!

 今月は太ももの鍛え方です。正確には「大腿四頭筋」という筋肉の鍛え方です。大腿四頭筋は膝関節を守る重要な筋肉です。スポーツをする若い方だけではなく、関節の軟骨が減って膝が痛いという高齢者の方にもおススメできる運動です。
 (図1)[https://locari.jp/posts/27052]より引用
 (図2)[http://tiryo.net/training.html]より引用

 まずは「スクワット」を紹介します。ダイエット目的でこれからウォーキングやランニングを始めようと考えている方、膝の関節が自由に動いて比較的下肢の筋力が維持されている方におススメです。(図1)のように肩幅に足を開いて、ゆっくりと膝を曲げていきます。ポイントは①背筋をまっすぐに保つこと、②太ももと地面が平行になるように、③膝とつま先がそろっていることです。慣れるまでは鏡を見ながらNo19imageフォームを確認しましょう。初めは無理なく膝が曲げられる範囲でも構いませんが、徐々に②を目指しましょう。10回×3セット、週2回が初めの目標です。

 次に、変形性膝関節症(膝関節の軟骨の減少)のため膝に痛みを感じ始めた方や、すでに下肢の筋力が低下し転倒しやすくなった方におススメの運動です。仰向けに寝た状態で、膝に力を入れて5秒間床に押し付けるようにします。これを1日に20回×3セット行います。2~3日間空けて、週に2回行いましょう。
膝が真っすぐ伸ばせない方は、(図2)の下図にあるように、膝裏にクッションやタオルなどを挟んでやるとよいです。TVを観ながらでもできる運動なので、ぜひチャレンジしてみてください。

*関節疾患や重い内臓疾患がある方、低栄養状態の患者様は、必ず主治医に相談してから行うようにしてください。

腹筋を鍛えましょう

 今月はクランチ(いわゆる「腹筋運動」)をご紹介します。腹筋を鍛えることで姿勢が良くなり、腰痛や肩こりを予防することができ、ウォーキングやランニング、様々なスポーツをする上でも有効です。クランチは腹筋の中でも特に腹直筋というおなかの中心にある筋肉を鍛える運動です。

No18 image やり方は、<左図>にあるように仰向けに寝て、膝を90度程度曲げた状態で、上半身をゆっくり曲げていく運動となります。足を伸ばしたままやらないこと、反動をつけずにゆっくりやることがポイントです。上半身を起こすこと自体が目的ではなく、腹直筋を収縮させることが目的なので、必ずしも上半身が完全に起こせなくても全くかまいません。背骨一つ一つを床から順番に離していくイメージで、おへそをのぞき込むようにゆっくり行ってください。背中やおしりが痛くなりやすい人はマットや布団を敷いて行うといいでしょう。

 この運動もネガティブ動作(上半身を上げた後、元の仰向けに戻る動作)をゆっくり行うと、腹直筋により大きな負荷がかかり効果的です。
 腕は<図1>のように、胸の前で組んでもいいですし、頭の後ろに組んで行ってもかまいません。
 関節には負担がかからず、運動初心者でも高齢者でもできる安全な運動です。まずは、5~10回続けてできるように練習してみてください。Let’s チャレンジ!!

*関節疾患や重い内臓疾患がある方、低栄養状態の患者様は、必ず主治医に相談してから行うようにしてください。

図:[比嘉一雄(監). 自重筋トレ100の基本. 枻出版社, 2013.]より

筋力トレーニング:大胸筋編

 今月号から具体的な自重トレーニング(筋トレ)を紹介していきます。今回は主に大胸筋を鍛える「プッシュアップ」を紹介します。いわゆる「腕立て伏せ」です。腕立て伏せは、最も基本的な筋トレメニューの一つであり、大胸筋だけではなく腹筋、背筋、上腕三頭筋など様々な筋肉を同時に鍛えることができる万能トレーニングです。
No.17-1 腕を肩幅の1.5倍程度に広げ、<左図:比喜一雄(監)自重筋トレ100の基本、枻出版社2013より>のように体を真っすぐにします。そこから胸が床すれすれに着く程度まで肘を曲げ、また伸ばし元の位置に戻ってきます。慣れるまでは1セット5~10回程度を目標にこの動作をまず“ゆっくり” “正しい”姿勢で行って下さい。

 肘が外側に開きすぎたり、体を曲げたり反ったりしなNo.17-2いように注意が必要です。<左図>の姿勢では難しすぎる場合には、<右図:[Tarzan. 5/14, 2015, No. 671, マガジンハウス.]より>のように膝をつけて行うと、負荷が軽くなり、ラクに動作が行えるようになります。女性や高齢者の方にはこちらがおススメです。
 より効果的に行うには、ネガティブ動作(腕立て伏せでは、腕を曲げ、体を下げる動作)をよりゆっくり行うとよいです。ゆっくり体を下げながら、左右の肩甲骨を寄せて胸を張るように意識するのがコツです。
 両手を肩幅1.5倍よりさらに狭くおけば、上腕三頭筋を、より広くおけば大胸筋をより集中して鍛えることができます。
 ぜひチャレンジしてみてください!

*関節疾患や重い内臓疾患がある方、低栄養状態の患者様は、必ず主治医に相談してから行うようにしてください。

左図:[比嘉一雄(監). 自重筋トレ100の基本. 枻出版社, 2013.]より
右図:[Tarzan. 5/14, 2015, No. 671, マガジンハウス.]より

運動療法その2 効果的な筋トレのやり方

先月号では「運動療法は難しくない!」「週2回程度の筋トレでOK!」というお話をしました。今回は筋トレ(自重トレーニング)をより効果的にやっていただくためのポイントを説明します。まず、無酸素運動と有酸素運動の効果には左表のような違いがあります。筋トレは主に「筋肥大(筋肉量のアップ)」を目的として行います(効果的にやせるためには食事療法や有酸素運動を組み合わせる必要があります)。筋トレの強度を表す指標に最大反復回数(RM)というものがあります。例えば、5RMは「1セットに5回反復して行うのが限界」という負荷をかけたトレーニングのことです。負荷の大きさによって最も期待できる効果が変わってきます(右表参照)。筋肥大を目的にトレーニングを行う場合には10~15RM程度の負荷で行うのが良いとされています。これまであまり運動をしたことがない方の場合には、まずは1回のトレーニングで無理なく「10回×3セット」できることを目安に始めることをお勧めします。慣れてきたら、徐々に1セットの負荷(RM)を上げていきますが、3セット以上する必要はありません
効果的に全身の筋肉を増やすためには、まずは大きな筋肉(大胸筋、腹直筋、大腿四頭筋、広背筋)をターゲットにするのが効率的です。次回は大胸筋の鍛え方を具体的に紹介します。

NO16-2

運動療法その1 実は簡単!?運動療法

実は簡単!?『運動療法』

No15 生活習慣病(メタボ)やロコモティブシンドローム(運動障害)などの予防のためには、高齢者になる前(18~64歳)に運動療法を始め、継続することが重要です。「健康づくりのための身体活動基準2013(厚生労働省)」によると、この年代では「1週間に60分以上、3メッツ以上」の運動をすることが奨励されています。「メッツ」とは運動の強さを表す指標で、例えば簡単な筋力トレーニングが約3.5メッツ程度の強さとなります。
 皆さんの中には「運動って毎日しないといけないんでしょ?」「ジム行く時間もお金もないし・・・」「天気が悪いとなかなか外に出られなくて続かないんだよねぇ・・・」と思う方もいるかもしれません。そこで今回からは「毎日しなくても効果的」「お金も時間もかからない」「天気に左右されずにできる」運動療法をご紹介していきたいと思います。
 まず運動をする頻度ですが、1日30分行えば週2日の運動でOKです。おススメは「自重トレーニング」です。自重トレーニングとは、器具などを使わずに自分の体重を負荷にして行う筋力トレーニング(筋トレ)のことです。自宅の中でいつでも行え、特別な器具も必要ではありません。筋トレ後は筋肉が壊され、回復までに48~72時間かかります。よって、効果的かつ安全に筋トレをするためにも週2回という頻度はちょうどよいのです。
 運動習慣がもともとない方がいきなりウォーキングやジョギングなどを始めると、関節を痛めたりしてしまうことがあります。無理なくできる自重トレーニングを行い筋肉をしっかりつけてから、そういった運動を始めた方が安全で効果的です。
 次回からは自重トレーニングの始め方を具体的に紹介していきますのでお楽しみに!

高齢者の低栄養

『知らぬ間に“低栄養”になっていませんか?』

 4月から食事療法についてお話をしてきましたが、今月は高齢者に多い低栄養がテーマです。
 いつも通り食事をしているつもりでも、多くの高齢者が「タンパク質・エネルギー低栄養状態(PEM:protein-energy malnutrition、ぺム)」になっていることが最近の研究で明らかになりました。「最近、食べる量(体重)が減ってきた」「いつも同じものばかりを食べている」という方や、COPDや慢性炎症性疾患をお持ちの方は特に注意が必要です。ペムという状態になると、次第に筋肉量が減少し、そして運動能力が低下、ついには寝たきり状態になってしまいます。筋肉量が減少した状態を「サルコペニア」、運動能力が低下した状態を「ロコモティブシンドローム」と呼ばれ、高齢者にとって大きな問題となっています。また、タンパク質が不足していると免疫力も低下することが分かっています。寝たきり状態や免疫力低下を予防するためには、しっかりと必要なタンパク質とエネルギー(カロリー)を摂取することが重要です。
 普段の食事の工夫だけでは十分な栄養が摂取できない場合には、ONS(Oral Nutrition Supplementation)と呼ばれる「栄養補助食品」を食事に加えて飲んでいただくこともあります。栄養補助食品は医療保険によって処方されますので、1回分で45円~80円程度(3割負担の場合)です。状態によって1日1~3回程度飲んでいただいています。
 「もしかしたら低栄養状態かも・・・」と気になる方は、ぜひご相談ください。

No14

食事療法その2「コンビニでもできる!」バランスの良い食事

先月に引き続き今月も「バランスの良い食事」についてお話します。 「バランスの良い食事」というと、「自炊しなければならない?」「コンビニや外食は一切禁止?」などと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。確かに「ラーメン+チャーハン(炭水化物+炭水化物)」、「菓子パン+缶コーヒー(炭水化物+炭水化物)」ではバランスが悪いですが、コンビニでもバランス良く食べることは可能です。ただそれにはいくつかコツがあります。 まず、左の写真を見てください。bad このようなお弁当形式のものはできるだけ避けましょう。先月お話しした「3つの皿」でいうところの「第1の皿(炭水化物)」の割合が多すぎで、「第3の皿(ビタミンミネラル)」が少なすぎます。バランスよく食べるコツは、「3つの皿」それぞれに対して1品づつ選んでいくやり方です。     下の写真は、「第1の皿」に対しておにぎり、「第2の皿(タンパク質)」に対してゆで卵、「第3の皿」に対してわかめサラダを選んでいます。このように選べばバランス良く食べることが可能です。おにぎりの代わりにパン、ゆで卵の代わりにチキンでも良いです。ただし、ポテトサラダやマカロニサラダは“サラダ”という名前がついていますが、これらはいわゆるサラダではなく「第1の皿」に入りますのでご注意ください。 good

食事療法その1 ~バランスの良い食事とは?~

No.12「先生、バランスの取れた食事って言われても、具体的にどうすればいいかわからないよ…?」 実際に患者さんから言われた言葉です。 「バランスの取れた食事が良い」そんなことはわかっている、でもどうすればわからない。そんな方は、まずは1食1食、「3つのお皿を埋めていくイメージ」を持ってみてください。 第1の皿は、身体を動かすエネルギーです。これがないと1日を過ごせません。第2の皿は身体を作るものです。人間の身体は常に壊れています。同時に身体を新しく作り変えていくことで人間は生きているのです。第3の皿は、身体の調子を整えるものです。食べたものをエネルギーに変えたり、筋肉や骨、皮膚などを効率よく作ったりするためにも必要なものです。 そして毎食必ずこの3つの皿すべてに載るようにメニューを選んでみてください。カロリーや細かい栄養素は考えなくていいです。 まずはこんな簡単な心掛けからはじめてみませんか?

成人気管支喘息

成人気管支喘息(いわゆる成人喘息)とは、大人になってから発症する気管支喘息のことです。喘息というと子供の病気というイメージがあるかもしれませんが、40歳を過ぎてから初めて喘息を発症するということもめずらしくありません。子供のころ喘息だった人が大人になって再発することもありますが、そういったケースは成人気管支喘息のほんの3~4%程度です。アレルギー性鼻炎、喫煙(受動喫煙も含む)、肥満、子供のころの呼吸器感染症(肺炎、クループなど)の経験、喘息の家族歴といった要因がある方は成人気管支喘息を発症しやすいと言われています。 喘息の症状は次のようなものがあります。心当たりがある方はぜひご相談ください。 ・夜中~朝方にかけてひどい咳が出る ・温度差が激しい場所で咳が出る ・運動をすると息苦しい ・ヒューヒュー、ぜーぜーという呼吸をする 喘息かどうか診断するためには「呼吸機能検査」という検査を行います。 喘息の治療で最も重要なことは、吸入薬(または飲み薬)をしっかり毎日続けることです。これは吸入ステロイド剤と言われるもので、喘息が悪くならないようにする“予防薬”です。これを怠ると重症化して、入院や人工呼吸器が必要になることもあります。日本では毎年2000人以上の方が喘息で亡くなられています。「最近調子がいいから・・・」といって自己判断でやめないようにしましょうsute1吸入ステロイド剤の例 吸入ステロイド剤         喘息発作時には吸入ステロイド剤とは異なる吸入薬を使用する場合もあります。これはあくまで応急処置(その場しのぎ)なので、頻回に苦しくなる場合にはかかりつけ医にすぐに相談しましょう。 kyuunyuu

急性胃腸炎

images冬の時期に風邪やインフルエンザとともに流行するのが「急性胃腸炎(ウィルス性胃腸炎)」です。典型的な経過としては、まず吐き気が生じ嘔吐し、次第に便が尿のような水様便になってきます。そして、吐き気から落ち着いてきて、最後に下痢が治まります。発熱や腹痛はあるときとないときがあり様々です。 冬の時期に風邪やインフルエンザとともに流行するのが「急性胃腸炎(ウィルス性胃腸炎)」です。典型的な経過としては、まず吐き気が生じ嘔吐し、次第に便が尿のような水様便になってきます。そして、吐き気から落ち着いてきて、最後に下痢が治まります。発熱や腹痛はある時とない時があり様々です。 virus01-001原因ウィルスとしてはノロウィルス、ロタウィルス、アデノウィルスなどが有名ですが、現時点では一般の患者さんに対してノロウィルス検査は保険では認められていないので自費になります(簡単なもので数千円、精密検査で数万円)。ロタウィルスは便検査により10分程度で調べることができますが、どのようなウィルスが原因だったとしても治療法は変わりません。検査をしてもしなくても、検査が陽性でも陰性でも治療は変わらないのです。自分だけではなく周囲の人も含めて手洗いを徹底し、予防に努め、罹ってしまったらちょっとづつでよいので水分を取って脱水に気をつけましょう。

風邪の常識!非常識!?

■風邪は風邪薬で治る? 残念ながら、風邪は風邪薬では治りません。風邪薬はあくまで症状を少し和らげるだけです。薬の効果が切れれば、また症状は強くなります。風邪を治すには自己治癒力を高めるために、ゆっくりと療養するのが一番です。 ■風邪に抗生剤は効かない! 風邪は「ウィルス」による病気なので抗生剤は効きません。肺炎の予防にもなりませんし、髄膜炎などの重症疾患を見落としやすくなったり、耐性菌という抗生剤が効きにくい細菌を身体の中に作ってしまう危険性があり、また下痢になりやすくなってしまいます。 ■うがい薬に予防効果はない うがい薬に効果があるとは言えません。2005年に発表された京都大学の研究によると、うがいをした時の風邪予防効果は水(水道水)で40%、ヨード液(いわゆるイソジン®)で12%でした。うがいをするなら水道水で十分です。 ■風邪後の長引く咳って? 感染後咳嗽(Postinfectiouscough)と呼ばれ、風邪の症状は長く続くことがあり、中には2か月も続くこともあります。自然に治るので心配はありませんが、3週間以上咳が続く場合には念のため一度お医者さんに診てもらいましょう。 【こんな時は要注意!すぐに受診しましょう!】 ●5日間以上38度近くの高い発熱が続く。 ●食事がいつもの半分以下しか食べれない。 ●飲水できない(少ない)。 ●ぼーっと寝ているようで声をかけても反応が悪い。 ●とにかく苦しそうだ!。

インフルエンザワクチンは「効く」のか!?

来月から今年のインフルエンザ予防接種が始まりますが、インフルエンザワクチンはそもそも「何」に対して効くのでしょうか?そして、「誰」に対して効くのでしょうか? 近年インフルエンザワクチンについて様々な研究がされていますので、その結果をご紹介しましょう。 ■小児(2~16歳まで)に対する効果 小児に対してインフルエンザの発症を30~40%に予防する効果が認められています。しかし、2歳以下の小児への効果と安全性については未だ不確かなままです。 ■健康な若い成人(16-65歳)に対する効果 インフルエンザの発症を約40%に抑えるという結果が出ています。しかし、「重症化」を予防できるという根拠はありません。それはインフルエンザ感染症の多くは自然治癒する疾患だからです。もともと健康な若い人はインフルエンザではほとんど重症化も死亡もしないので、さらにそれを減らそうとするのは難しいことなのです。 ■自宅にいる高齢者(65歳以上)に対する効果 高齢者については主に重症化(肺炎化、入院、死亡)を50~60%に減少させるという結果が出ています。また、予防接種した個人だけではなく、周囲の人の重症化も減らす可能性が示唆されています。 ■施設入所中の高齢者(65歳以上)に対する効果 肺炎の予防になることが示唆されています。 施設職員への接種でも、入所者の死亡率を減らすかもしれないと言われています。 以上をまとめると、インフルエンザワクチンは「若い人に対しては発症を予防できる、高齢者に対しては重症化を予防できる」と言えます。 子供から高齢者まで、効果が期待できるので、ぜひみなさん予防接種を 受けましょう!

ポリファーマシー(複数の薬を投与されている患者さん)

 現代医療で問題となっている「ポリファーマシー」をご存知でしょうか? 「たくさんの薬を投与されている状態」という意味です。 慢性心不全と腰痛を持っているAさん(80歳)。この方は血圧を下げる薬と痛み止めを飲んでいます。ある日、血圧が高めということで血圧の薬が追加されました。翌日、Aさんはめまいを感じ耳鼻科を受診してめまい止めの薬を出されました。胃の調子も悪くなってきたので消化器科を受診し胃薬を処方されました。すると1週間後から夜眠れなくなり、家族が「認知症が進んだのではないか」と心配して神経内科を受診させ、認知症の薬を飲むことにもなりました。  この時点でAさんは少なくとも6種類以上もの薬を飲んでいることになります。実はAさんのめまいは血圧の薬の副作用であり、胃の痛みは痛み止め薬の副作用、夜眠れなくなったのは胃薬の副作用のためです。症状に対して薬がどんどん増えていってしまい、増やした薬のせいでまた新たな問題が生じてしまっています。これが「ポリファーマシー」です。めまいが起こりにくい血圧の薬に代え、胃腸障害が出にくい痛み止めに代えることで、薬の数を増やすことなく、めまいも胃痛も生じず、夜も寝ることができたかもしれません。 もちろん、必要な最低限の薬は飲まなければいけませんが、減らすことが可能な薬は減らすべきです。特にAさんのような高齢者は薬の副作用が出やすいので注意が必要です。「ポリファーマシー」にある高齢者は処方通りに薬が飲みにくくなり、入院率や死亡率も高いという研究結果があります。 「100人に1人以上が薬の副作用が原因で入院となった」という報告もあります。また、複数の医者にかかっている状態(ポリドクター)は「ポリファーマシー」につながりやすいと言われています。 たくさんのお薬を処方されている皆さん、一度ご自分のお薬を主治医の先生と見直してみてはいかがでしょうか?

同時にたくさんの病気をもつ高齢者

 まず、下の【事例】をご覧ください。このように複数の病気を持ち、複数の診療科にかかっている高齢患者さんはめずらしくないと思います。この事例では、最近心不全が悪くなってきたので循環器科で利尿剤が増やされたために尿量が増えたとこ、もともと膝の痛みなどで移動能力が低かったためにトイレに間に合わなくなり失禁してしまっていたようです。そして、その失禁を気にしてうつ状態になり食欲が低下し、あまり水も飲まなくなってしまったということでした。このように高齢者では複数の問題が複雑に絡み合った結果、症状を訴えることが少なくありません。そのため、この方の健康問題の全体像が見えていなければ正しいケアを行うことは困難です。

 またこの方の問題点としては、整形外科でよく処方される痛 み止めの薬は心房細動の患者さんが飲むワーファリンという薬 の効果を強めてしまったり、心不全を悪化させてしまう危険性 があります。そして、もっとも大きな問題は、この方の健康問題すべてを俯瞰してコーディネートしてくれる主治医としての機能を持った医師がいないことでした。この高齢夫婦に介護が必要になっ場合にも、医療だけではなく介護の面でも診てくれる主治医が必要です。生活機能が低下した高齢者にとっては複数の科を受診すること自体も大きな負担になってきます。

 事例の方が抱えているような糖尿病、心不全、心房細動、変 形性膝関節症、慢性腰痛、認知症といった「日常よく見られる病気」は家庭医(総合診療医)の得意分野です。複数の病気を持つ高齢患者のみなさん、あなたの『主治医』(医療・介護の トータルコーディネーター)はもう見つかっているでしょう か?

【事例】75歳男性 ●73歳の妻と二人暮らし。 ●糖尿病のためA内科医院に、心不全と心房細動のためB循環器科外来に、腰痛と膝の痛みのためC整形外科医院に通院中。最近、物忘れも気になってきたので神経内科も受診する予定。本日、尿失禁と食欲低下があるとのことで別居している娘さんに連れられて家庭医療科外来を受診した。

めまい

7月に入り暑さが増してきましたが、皆さん体調はいかがでしょうか?家庭医療科通信6月号「熱中症」を読んで、ぜひ熱中症予防の参考にしてください。 さて今月は「めまい」についてです。 「めまい」には大きく分けて①回転性のめまいと②浮動性のめまいの2種類があります。

① 回転性のめまい:ぐるぐる景色が回るめまい

この原因の多くが良性発作性頭位変換めまい症(BPPV)と言われるものです。寝返りで頭を動かしたときにめまいが起こり、じっと頭を動かさなければ次第に治まるのが特徴です。耳の三半規管の中にある耳石が原因です。自然に軽快・治癒することがほとんどですが、エプリー法という理学療法で治癒する場合もあります。飲み薬や点滴などお薬では治りません。memai

②  浮動性のめまい:ふわふわ、またはふらっとするめまい

この原因の多くが脳に行く血流が一時的に足りなくなる“立ちくらみ”(起立性低血圧)です。身体を起こした時に起こり、横になっていると症状がないことが特徴です。熱中症で脱水になっていたり、心臓の病気や血圧を下げる薬、おしっこを出しやすくする薬、睡眠薬(安定剤)の副作用でも起こることがあります。水分摂取、原因となる病気や薬を取り除くことで治ります。memai2   「めまい」は様々な原因で起こりますが、問診(病歴)でほぼ検討をつけることができます。 頭部画像検査(CTMRI)が必要になることはほとんどありません(必要な場合もあります)。 このように家庭医療科は「めまい」の患者さんを総合的な視点から診させていただいています。

熱中症

まだ6月というのに真夏のような暑い日が続いていますね。皆さんはどのようにお過ごしでしょうか?この時期に多いのが「熱中症」です。実は夏よりも春~初夏の方がなりやすい病気なのです。この時期は、つい涼しい冬や春のままの服装(厚着、重ね着)だったり、掛布団を何枚も使用していたりすることが多いためです。特に高齢者の方は汗をかきにくかったり、もともと“寒がりだから”といって厚着になる傾向にあるので特に注意が必要です。 熱中症を予防するには、なんといっても涼しくすること。その日の天候や気温に合わせて着るものを選んでください。認知症の方はこの“服を選ぶ”という行為が苦手なのでご家族の協力 が必要です。そして、暑い日は部屋の窓を開け、場合によっては扇風機やエアコンを使用してください。「猫が入ってくるから」「電気代がもったいないから」とは言わず、ここは思い切ってやってみましょう。 また積極的に水分をとることも重要です。しかし「水」だけを取ると逆効果です。熱中症では水とともに血液中の「塩分(ナトリウム)」も不足していきます。 hoeki必ず「塩分」を含んだものを摂取するようにしてください。手軽なものとしては、市販のスポーツドリンクやOS-1(オーエスワン)®といったものでもかまいません。家庭で作れる簡単なものとしては(右図)にあげたようなものがあります。これは世界保健機関(WHO)が勧める経口補液や、病院でされる点滴とほぼ同じ組成になっています。熱中症だけではなく、嘔吐下痢症など脱水が心配される場合にも使用できるのでぜひ覚えておいてくださいね。  

五月病

皆さん、先日の大型連休はどのように過ごされたでしょうか?gogatubyou 新しい職場などに変わられて一ヶ月が経つという方も多いと思います。この時期に増えてくるのが「五月病」です。医学的には「五月病」という病名はなく「適応障害」と言われることもあります。新年度が始まり一ヶ月が過ぎたこ ろの環境の変化、ストレスによって現れる様々な症状のことです。具体的には、頭痛、めまい、不眠・眠気、食欲不振、抑うつ気分などです。 これらの症状が数日の経過で急に始まった場合や一ヶ月以上続く場合、日常 生活に支障が出るほど悪化してきた場合には「五月病」(適応障害)ではなく他の病気(緊張性頭痛、心疾患、甲状腺疾患、貧血、うつ病など)の可能性も考えられます。 「五月病」であった場合もできるだけ早く環境に 慣れたり、ストレスを自分でコントロールできるように 認知行動療法や支持的精神療法といった方法や、 場合によっては薬物療法で治療していきます。 お悩みの方は一度家庭医療科医師にご相談下さい。